2023/02/10 22:17




「こんな華やかな着物はどこに来ていくの?」という年配のお客様の声を聞き、商品と市場ニーズがかけ離れていると実感したことも、その選択を後押ししました。

そこで取り組んだのが、柿渋に携わる方々から「肌にやさしい」と聞いていた柿渋での染色です。

呉服を販売するかたわら、簡易的な柿渋染めの靴下や手袋をプレゼントしていたお客様から喜びの声をいただくなかで、柿渋のポテンシャルを確信したのです。




しかし、私の前には茨の道が待っていました。

柿渋染めの呉服は前例がないので、師匠もいませんし、手引きもありません。

まったくの独学だったため、うまくいかない(商品として売れるものができない)日々が続いたのです。

研究者の方などにも相談しながら、思いつく限りの方法を試し、数え切れないほどの失敗を重ねた末に見つけ出せたのが今のやり方。


私をサポートしてくれている妻も、「トラブルばかり起きる柿渋は大嫌い」と何度も口にするほど悪戦苦闘しましたが、途中で投げ出そうと考えたことはありません。

人生も折り返し地点を過ぎていましたし、柿渋のよさを皆さんにも体感してほしいという思いが何よりも勝っていたからです。

柿渋を使った商品が人の役に立つことを体験的に感じてきた身として、柿渋の魅力をもっと多くの人に知ってほしいと願っています。